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相続税の申告期限を延長することはできる?

相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。申告期限を間際にして課税価額、相続税額等に異動が生じる特別な事情が生じた場合は、申告期限を延長することができます。
なお、申告期限の延長が認められるケースは限られており、遺産分割協議が調わない、相続財産の調査が終わっていない等は、申告期限延長の理由に該当しません。

相続税の申告期限を延長することはできる?

目次

1 相続税の申告期限延長が認められる特殊ケース

(1)申告期限の1か月以内に大きな状況変化があった場合

申告期限の1か月以内に、以下のような大きな状況の変化が生じたときは、それが生じたことを知った日から2か月の範囲内で申告期限を延長することができます。

  1. 認知、相続人の廃除、相続の回復、その他の事由により相続人に異動が生じたとき
  2. 遺留分の侵害額請求により返還、弁償額が確定したとき
  3. 遺贈に係る遺言書が発見されたときや、遺贈の放棄があったとき
  4. 相続等により取得した財産の権利の帰属に対する訴えの判決があったとき
  5. 相続開始後に認知された人の価額の支払請求権の規定による請求があったことにより弁済すべき額が確定したとき
  6. 相続人の失踪宣告があったとき
  7. 既に生まれたとみなされる胎児が生まれたとき
  8. 退職手当金等の支給額が確定したとき

(2)災害やその他やむを得ない理由がある場合

災害その他やむを得ない理由がある場合は、その理由が止んだ日から2か月の範囲内で相続税の申告期限の延長ができます。

国税長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由の止んだ日から2か月以内に限り、当該期限を延長することができます。

その他やむを得ない理由とは、おおむね次のような事由をいいます。

  1. 地震、暴風、豪雨、津波、落雷、地滑りその他の自然現象の異変による災害
  2. 火災、火薬類の爆発、ガス爆発、交通途絶その他の人為による異常な災害
  3. 申告等をする者の重傷病、申告等に用いる情報システムで国税庁が運用する期限間際の使用不能その他の自己の責めに帰さないやむを得ない事実。

例えば、相続人の一人が新型コロナウイルス感染症に感染したことなどにより、相続税の申告期限までに申告できない場合については、その状況が止んだ日から2か月以内に個別の申請を行うことでその方の申告期限等が延長されます。

(3)相続人となる胎児が生まれた場合

相続開始のときに相続人となる胎児があり、その胎児が生まれた場合に全ての相続人に申告義務がなくなるときは、生まれた日から2か月の範囲内で相続税の申告期限の延長ができます。

相続人となる胎児がおり、その胎児が生まれたものとして課税価格及び相続税を計算したときにおいて、相続又は遺贈により財産を取得した全ての人が相続税の申告書を提出する義務がなくなる場合は、その胎児が生まれた日から2か月の範囲内で申告期限を延長することができます。

2 相続税の申告期限延長の注意とリスク

(1)遺産分割協議が調わない、相続財産の調査が終わっていない等は、申告期限の延長理由には該当しない

法定申告期限までに遺産分割協議が調わない場合は、その未分割財産については、各共同相続人又は包括受遺者が、民法の規定による相続分の割合又は包括遺贈の割合に従ってその財産を取得したものとして、課税価格及び相続税額を計算し、相続税の申告をします。
未分割による申告後、上記の割合と異なる場合で分割がされた場合は、それに基づいて、更生の請求、修正申告を行うことができます。

(2)胎児を含めても相続税が発生する場合は延長は認められない

胎児を含めて算出しても相続人等の納付すべき相続税額が発生して相続税申告書の提出義務がなくならない場合には、申告期限の延長は認められません。

(3)申告期限を過ぎてからの申告は、無申告加算税、延滞税等が課される。

申告期限を過ぎて申告をした場合は、期限後申告となります。
期限後申告の場合は、無申告加算税と法定納期限の翌日から相続税を完納する日までの期間の日数に応じた延滞税が課されます。

3 相続税の申告期限延長の手続

災害その他やむを得ない理由により、申告期限等の延長を受けようとする場合には、災害その他やむを得ない理由のやんだ日から2か月以内に申請を行う必要があります。
申請に当たっては、納税地を管轄する税務署長に対し、災害その他やむを得ない理由がやんだ日後、2か月以内に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出すれば、税務署長が指定した日(災害その他やむを得ない理由がやんだ日から2か月以内)まで期限が延長されます。

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