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遺産分割対策としての生命保険の活用

生命保険は、受取人固有の財産であるため、遺産分割協議の対象外であり、被相続人(亡くなった人)は、保険金の受取人を指定しておくことで、生前から自分の意思で特定の人に一定の財産を相続させることが可能となります。また、生命保険を遺留分対策として利用することも可能です。

遺産分割対策としての生命保険の活用

目次

1 遺産分割協議における生命保険の扱い

民法には、相続の一般的効力として「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」(民896)とあります。生命保険金は、受取人として特定の者が指定されているときは、受取人が自分の固有の権利(民537)として取得するために、「被相続人の財産に属した」相続財産とはいえません。したがって、生命保険金は遺産分割協議の対象外となり、一定の金銭を確実に相続させることが可能となります。

また、被相続人名義の預金がある場合、金融機関が被相続人の死亡を確認した時点で口座が凍結され、一般的には遺産分割協議が調うなど相続人全員の同意がないと、相続人であっても預金の引き出しなどの口座取引ができなくなります。しかし、前述したとおり、生命保険金は遺産分割協議の対象外となるので、受取人は遺産分割協議の成否と関係なく、単独で生命保険会社に請求し生命保険金を受け取ることができます。

ただし、受取人が被相続人になっている場合は、次のいずれかの取り扱いとなります。
①生命保険金請求権を遺産として法定相続分に従って各相続人が保険金を取得することになる
②生命保険金請求権が遺産分割の対象となる

2 遺産分割協議における生命保険の活用方法

被相続人が死亡して遺言が無い場合は、通常相続人間で遺産分割協議が行われます。
しかし、相続財産が不動産しかない場合や、被相続人が会社を経営しており自社株を有していた場合に、他の相続人が法定相続分を主張してくると不都合が生じます。
この場合には、相続人のうち1人が相続財産(不動産、自社株など)を取得し、その他の相続人に代償として相応の財産を現金で給付する(代償分割)必要があります。代償分割の原資として、生命保険を活用することができます。

3 生命保険金の非課税枠

生命保険金については、一定の非課税枠が設けられています。非課税枠についての解説は、「生命保険金の非課税枠の活用について」を参照してください。

4 生命保険金と特別受益

特別受益とは、特定の相続人が、被相続人から婚姻、養子縁組のため、若しくは生計の資本として生前贈与や遺贈を受けているときの利益をいい、被相続人が相続開始時のもっていた財産の価額に、その贈与の価額を加えたものが相続財産とみなされ、遺産分割の対象となり、その相続財産の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額が特別受益を受けた相続人(特別受益者)の相続分となります(持戻し)。
生命保険金は、受取人固有の財産なので、相続財産とはいえず、原則として、特別受益には当たりません。
しかし、例外として、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条(特別受益者の相続分)の趣旨に照らして到底是認することができないほど著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合は、特別受益に当たり、持戻しが問題となります。遺産の額に比べて生命保険金の額が大きい場合に、特別受益とみなされる傾向にあります。

生前に受けた贈与が相続財産にカウントされる特別受益とは

5 生命保険金と相続放棄

生命保険の受取人に相続人が指定された場合、生命保険は受取人固有の財産となるので、受取人に指定された相続人が相続放棄をしても、生命保険を受取ることができます。反対に、受取人が生命保険を受取ったからといって、単純承認したものとみんされることはなく、限定承認・相続放棄をすることができます。
また、相続放棄をした場合には、生命保険金の非課税の適用はありませんので、注意が必要です。

相続財産がマイナスとなる場合の対策-相続放棄について解説

6 遺産分割協議における生命保険の注意とリスク

(1)受取人が被相続人になっている場合は遺産分割の対象となる

生命保険の受取人が被相続人になっている場合は、遺産分割の対象となります。

(2)契約時期によっては被相続人は生命保険に加入できないこともある

ある程度年をとってから生命保険に加入しようとしても、病気で加入できなかったり、加入できても保険料が割高になります。
また、相続対策で生命保険を利用するとなると、原則終身保険を使うことになりますが、終身保険は定期保険に比べると保険料が割高になります。
そのため、加入の可否、保険料の額なども考慮して、生命保険の加入時期を考える必要があります。

(3)特別受益に該当する場合もある

生命保険金は原則として特別受益には当たりませんが、共同相続人間で著しい不公平が生じる場合には、特別受益に準じて持戻し対象となる場合もあります。

(4)保険金受取を他の相続人に知られる

被相続人が保険料を負担していた場合には、受け取った生命保険金の総額を相続税の申告書に記載する必要があり、生命保険金を受け取った事実が他の共同相続人に知られてしまうことがあります。

7 遺産分割協議における生命保険の効果まとめ

  1. 特定の人に確実に財産を相続できる
  2. 遺留分対策として利用できる
  3. 遺留分侵害額請求権の対象にならない
  4. 相続放棄をしても受け取ることができる

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