亡くなった親が一人で住んでいた家を相続しても、誰も住むことなく空き家となっていることが多くあります。家を取り壊して更地にすると固定資産税が上がったり、売却すると多額の譲渡税が発生するなどがその理由として考えられます。しかし、空き家が放置されると倒壊のリスクや周辺環境に悪影響がでることから、空き家を抑制する方策が求められています。
「相続による空き家の売却」については、一定の場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる税制上の優遇処置がとられています。
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個人が居住している(居住していた)家屋または居住している(居住していた)家屋とその敷地等を売却した場合には、譲渡所得額から最高3,000万円を控除することができる『居住用財産を譲渡したときの3,000万円特別控除』という特例があります。
そして、一定の条件を満たせば、相続で発生した空き家等を売却する場合にも、この特例が適用されます。
「居住用財産を譲渡したときの3,000万円特別控除」は、現に居住している又は居住しなくなってから3年以内といった条件を満たす家屋の譲渡が対象となりますが、相続によって空き家となっている家屋についても、一定の条件を満たしている場合に3,000万円の特別控除が適用されます。
相続又は遺贈により被相続人(亡くなった方)が住んでいた家屋(敷地等を含む)を取得した相続人が、平成28年(2016年)4月1日から令和5年(2023年)12月31日までの間に、その居住用家屋を耐震基準に満たした状態で譲渡した場合、又は解体して更地の状態で譲渡をした場合には、居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、譲渡所得から最高3,000万円の特別控除ができる制度です。
空き家に係る譲渡所得の特別控除の適用要件は、次の通りです。
※1 相続税の取得費用加算の特例
相続又は遺贈により財産を取得した者が、その相続等により取得した財産を一定期間内に譲渡した場合には、その者に課された相続税額の内、一定の金額をその譲渡した財産の取得費に加算して譲渡所得を計算する特例。
この特例を受けるためには、居住用家屋の譲渡をした年に確定申告を行う必要があります。
この特別控除の対象となる居住用家屋は、相続開始の直前において被相続人以外に居住していた者がないことが要件となっています。この居住用家屋を相続する者に持ち家がないなど一定の場合には、相続税の申告期限まで売却せずに保有していると、その敷地は小規模宅地等の特例の特定居住用宅地等(※2)にも該当して、3,000万円の特別控除とダブル適用できます。
※2 特定居住用宅地等とは
(1)内容
相続開始の直前において、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等をいい、次のいずれかに該当する者が取得した場合のその取得した部分をいいます。
① 被相続人の配偶者
② 被相続人と同居していた親族で、相続税の申告期限まで住居・保有を継続している
③ 被相続人と生計を共にしていた親族が住む土地で、相続税の申告期限まで住居・保有を継続している
(2)効果
特定居住用宅地等に該当すれば、最大330㎡部分について相続税の課税価格が80%減額されます。