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独り身で子や身近に親族がいらっしゃらない方が亡くなるなどして、相続人の存在が明らかでなく、相続財産を管理する人がいない場合があります。
このような場合であっても、相続財産を管理して、死亡した方にお金を貸していた債権者に弁済したり、遺言により遺贈を受けた人(受遺者)に遺言内容を実行する必要があります。
そのため民法は、相続人が明らかでないときには、家庭裁判所が相続財産管理人を選任して、相続財産の処理手続きをおこなうようにしています。
法定相続人とは、被相続人の配偶者、直系卑属(子、孫等)、直系尊属(実親、祖父母等)、兄弟姉妹であり、遺言による指定がない場合には、法律に基づいて遺産が配分されることになります。
この法定相続人が先に死亡するなどして誰一人としていない場合は、相続人不存在にあたります。
仮に法定相続人に当たる者がいたとしても、全員が相続放棄したり、対象者が相続欠格、相続人の廃除該当し代襲相続人もいないなど、結局相続権を有する者がいない場合も、相続人不存在とみなされます。
戸籍上相続人がいることになっていても、その相続人が行方不明、または生死不明である場合には、相続人不存在にはなりません。
このような場合には、被相続人にお金を貸すなどの利害がある人が、家庭裁判所に失踪宣告か不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。
失踪宣告とは、普通の場合は、生死不明の状態が7年以上継続していると失踪宣告が下され、その時点で失踪者は死亡したものとみなされることです。
不在者財産管理人は、おおむね1年以上不在である場合で選任が認められると、不在者に代わり不在者の財産を管理します。
遺言により相続財産全部の包括遺贈があり受遺者がいる場合には、相続人不存在にはあたりません(受遺者が遺贈の放棄をした場合を除く)。
相続人不存在が確定し、債権者、受遺者への清算手続きが完了してもなお相続財産が残った場合には、特別縁故者に相続財産を分与する制度があります。
特別縁故者とは、被相続人と特別の関係にあった人で、次の要件に該当する人になります。
手続きとしては、特別縁故者にあたると主張する者が、最後の相続人捜索の公告期間が満了してから3ケ月以内に、家庭裁判所に分与の申し立てをします。
家庭裁判所が分与を認める審判を行うと、分与を受けた者は財産を承継したことになります。
分与される額は、残った相続財産すべてではなく、被相続人との親密な関係性、世話の程度に応じて家庭裁判所が評価します。
特別縁故者への財産分与の申し立てが行われなかったり、あるいは分与が行われてもなお残る財産がある場合には、これらの財産は国庫に帰属することになります。