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公正証書遺言の有無検索、原本の閲覧・謄本の交付申請の方法

相続手続でまず最初にやらなければならないのが遺言の確認です。
故人(被相続人)が公正証書遺言を残しているか不明な場合や、公正証書遺言をしていたはずだが正本・謄本が見つからない場合は、公証役場で公正証書遺言の検索、閲覧、謄本交付をすることができます。

必要な書類を公証役場に提出し遺言の検索・紹介手続きを依頼すれば、依頼した公証役場より日本公証人連合会事務局に対して公正証書遺言検索システムを使用した検索・照会の依頼がなされ、照会者は公正証書遺言の有無や保管している公証役場を知ることができます。また、嘱託人(公正証書作成を依頼した遺言者)や承継人(相続人)、利害関係人であることを証明すれば、遺言公正証書の閲覧・謄本交付請求をすることができます。

公正証書遺言の有無検索、原本の閲覧・謄本の交付申請の方法

目次

1 公正証書遺言検索システム

(1)公正証書遺言が見つからないとき

公証役場で公正証書遺言を作成すると、遺言者に公正証書遺言の正本・謄本が交付され、公証役場において公正証書遺言の原本が20年間保管されます。遺言者が生前に公正証書遺言を作成したものの、保管場所を知らせずに亡くなり、公正証書遺言の正本等が発見できない場合には、公証役場で、公正証書遺言を検索・照会してもらうことができます。

(2)システムで検索できる範囲

日本公証人連合会の「遺言検索システム」を用いれば、昭和64年1月1日以降に全国で作成された公正証書遺言を検索・照会することができます。全国のどの公証役場でも検索・照会の依頼が可能です。なお、東京公証人会所属の公証人が作成した公正証書遺言については、昭和56年1月1日以降のもの、大阪公証人会所属の公証人が作成した公正証書遺言については、昭和55年1月1日以降のものが検索・照会の対象となります。

(3)検索・照会を依頼するときの手順

検索・照会の具体的な手順は以下の通りです。

  1. 被相続人死亡の事実を証明する書類(除籍全部事項証明書、死亡証明書など)、照会者が相続人であることを証明する書類(戸籍全部事項証明書など)及び紹介者の身分を証する資料(自動車運転免許証、パスポートなど)を準備する。
  2. 準備した書類を公証役場(どの公証役場でも構いません)に提出し、遺言の検索・照会手続を依頼する。
  3. 依頼を受けた公証役場は、日本公証人連合会事務局に対して、被相続人の氏名・生年月日等の情報を提供し、公正証書遺言の有無や保管している公証役場の検索・照会を依頼する。
  4. 依頼を受けた日本公証人連合会事務局は、検索結果を公証役場に対して回答し、回答を受けた公証役場は、照会者に対し、公正証書遺言の有無や保管している公証役場を通知する。
  5. その後、照会者である相続人は、公正証書遺言が実際に保管されている公証役場に対し、公正証書遺言謄本の交付請求をする。

2 遺言公正証書の閲覧・謄本交付請求について

(1)公証人が作成した書類の持出し禁止、公証人の黙秘義務など

公証人は、作成した公正証書の原本・付属書類を原則として公証役場の外に持ち出すことができず、公証役場に付属する倉庫又は堅ろうな建物内に書類を保管しなければならないとされ、法律に別段の定めがある場合を除き、取り扱った案件について漏洩してはならないとされています。もっとも、この黙秘義務には例外があり、嘱託人(遺言者)の同意を得た場合にはこの限りでないとされています。

(2)書類の持出し禁止・黙秘義務の例外

嘱託人(遺言者)、その承継人(相続人)又は法律上の利害関係人であることを証明した者は、証書の原本の閲覧および証書の原本又はその付属書類の謄本の交付を請求することができます。この閲覧請求及び謄本交付請求による開示は、書類の持出し禁止、黙秘義務の例外と位置付けられており、人違いのないことを担保するため、請求者が公証人と面識のある場合を除いて、嘱託人本人、との承継人あるいは利害関係人であることを印鑑証明書・実印、自動車運転免許証により証明して請求する必要があるなど、厳格な運用がなされています。

(3)遺言公正証書の閲覧・謄本交付請求

遺言公正証書も公証人が作成した公正証書ですから、嘱託人(遺言作成者本人)、承継人(相続人)又は利害関係人(受遺者など)であることを証明すれば、一般の法律行為に関する公正証書と同様、閲覧・謄本の交付請求をすることができることになります。

遺言者が亡くなった後は、相続人は、その承継人として閲覧・謄本の交付請求をすることができます。この場合、遺言者死亡の事実を証明する書類(除籍全部事項証明書、死亡証明書など)、請求者が相続人であることを証明する書類(戸籍全部事項証明書など)及び請求者の身分を証する書類(自動車運転免許証、パスポートなど)をもって相続人本人であることを証明する必要があります。

これに対し、遺言者が生存中に、遺言書に相続人や受遺者として記載されている方が閲覧・謄本交付請求をすることはできません。その理由は、遺言者の生存中は、遺言者の遺産やその帰すうを記した遺言に対し、いまだ法律上の利害関係を有するとは認められないからです。公正証書遺言の遺言者の推定相続人は、公証人法44条1項、51条1項にいう「証書ノ趣旨ニ付法律上利害ノ関係ヲ有スル」者には当たらないと解されています。

遺言者が生存中の場合でも、遺言者から委任を受けた代理人が、代理権を証する書面(委任状)に、委任状の真正を証明する認証又は遺言者の印鑑証明書を添付して提出し、代理権限を証明した場合は、代理人を通じて閲覧・謄本の交付請求をすることができます。この場合は、遺言者が遺言の開示について同意したものと同視できるからです。もっとも、未成年の子の親等の法定代理人からの請求は、一般の公正証書に関する閲覧・謄本交付請求とは異なり、認められないと考えられています。遺言公正証書の存在や内容を秘密にしておきたいという遺言者の通常の意思を尊重するためです。成年被後見人が正常なときにした遺言公正証書について、その後後見人からの謄本請求は認められないとされています。

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