人が亡くなると、その瞬間に被相続人(亡くなった方)が持っていた財産は、相続人(財産を引継ぐ人)による共有が始まります。
実際に相続人が相続財産を引継ぐためには相続手続きが必要になります。
相続手続きには期限が定められているものがありますので、一連の流れ、期限を頭に入れて手続きを進めることが重要です。
目次
遺言書の有無により、相続の進め方が大きく変わる場合がありますので、相続手続きの手始めとして、まずは遺言書が残されていないか確認を行います。
遺言書は自宅の机や棚、タンス、仏壇などに保管されているケースが多いようです。
貸金庫に遺言書を保管していることもありますが、契約者が死亡した場合、貸金庫を開けるには相続人全員の立会いが必要になったりしますので、注意が必要です。
2020年7月より、法務局で自筆証書遺言書を保管する自筆証書遺言書保管制度が開始されています。
2021年度からは、遺言者が死亡した場合に法務局から相続人等に通知が行われる仕組みもスタートしています。
遺言書の検認
遺言者が自分で作成した自筆証書遺言書がみつかった場合、すぐに開封してはいけません。
自筆証書遺言書は、家庭裁判所による「検認」を受けなければなりません。
検認を受けずに勝手に遺言書を開封すると、「5万円以下の過料」が科せられてしまいます。
検認手続きに必要なもの
・検認申立書
・遺言者の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類
・相続人全員の戸籍謄本
・収入印紙800円
・連絡用の郵便切手
なお、自筆証書遺言書保管制度を利用している場合および公正証書遺言書の場合は、検認の必要はありません。
相続人調査は、亡くなった人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類を集めます。
戸籍謄本類は、本籍地の役所に申請して発行してもらいます。
相続財産調査は、亡くなった人の遺産がどれくらいあるかを明らかにすることです。
故人名義の通帳などの資料を探し、金融機関に残高証明書を発行してもらったり、取引のあった証券会社に問い合わせをしたり、不動産については法務局で全事項証明書を発行してもらうなどして調べます。
借金などのマイナス財産についても明らかにする必要があります。
亡くなった人に多額の借金があり、相続財産だけでは返済できないような場合には、相続放棄や限定承認を検討する必要があります。
相続放棄を行うと、一切の資産や負債について、最初から相続しなかったことになります。
限定承認の場合は、資産が負債を上回った分だけを相続できますが、相続人全員で手続きをしなければなりません。
【申請先】
被相続人(亡くなった人)の住所所在地の家庭裁判所
【必要書類】
相続放棄の場合
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の住民票除票
・申述人(申請者)の戸籍謄本
限定承認の場合は、被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類やその他の戸籍謄本類、財産目録なども必要になります。
【申請期限】
被相続人の死亡を知ったときから3か月以内
【費用】
・収入印紙800円
・連絡用の郵便切手
準確定申告とは、亡くなった人が自営業者などで所得税の確定申告をしていた場合、相続人が亡くなった人に代わって確定申告を行うことをいいます。
亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得を調べて、納税が必要な場合には、忘れずに必ず行いましょう。
【提出先】
亡くなった人の住所地にある税務署
【必要書類】
一般的な所得税の確定申告書類のほか、確定申告書付表、委任状(準確定申告用)
【期限】
相続があることを知った日の翌日から4か月以内
相続人と相続財産が明らかになったら、遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を決める話し合いをすることで、遺産分割協議書は、その結果をまとめたものです。
話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を行い、それでも解決しない場合には遺産分割審判となり、家庭裁判所が遺産分割の方法を決めることになります。
遺産分割の方法が決定したら、相続財産を相続人に移転させる手続きを行います。
預貯金
【申請先】
取引先金融機関
【必要書類】
被相続人の除籍謄本、預貯金通帳、銀行印、キャッシュカード
相続人の戸籍謄本
遺産分割協議書または遺言書
名義変更の申請書
株式
【申請先】
証券会社
【必要書類】
被相続人の除籍謄本
相続人の戸籍謄本
証券会社への届出印
相続人の証券口座が分かる資料
遺産分割協議書または遺言書
不動産
【申請先】
不動産の管轄の法務局
【必要書類】
被相続人の除籍謄本
被相続人の住民票除票
相続人の住民票
相続人の戸籍謄本
遺産分割協議書または遺言書
固定資産評価証明書
相続関係説明図
相続総額が相続税の基礎控除を超える場合は、相続税の申告と納税を行います。
基礎控除=3,000万円+法定相続人数×600万円
【提出先】
管轄の税務署
【期限】
死亡日の翌日から10か月以内
期限までに相続人の間で遺産分割がまとまらない場合でも申告は行わなければなりません。
その場合は、一旦法定相続分で相続したものとして申告を行い、後から実際の相続分に基づき修正申告(または更生の請求)を行います。
被相続人の配偶者、子、親には、相続財産の一定割合を引き継ぐ権利である遺留分が認められています。
遺言などで遺留分に満たない分しか遺産を受け取れない場合には、他の相続人に対して、不足分を請求することができます。
【期限】
相続の開始および遺留分の侵害があることを知ったときから1年以内、または相続開始から10年以内
遺産分割の結果や遺留分侵害請求により、相続税の申告時(法定相続分)と実際の相続分が異なる場合は、更生の請求、修正申告、期限後申告を行います。
更生の請求
相続税を必要以上に納めていた場合に取り戻す手続きです。
修正申告
相続税額が増額になる場合に、追加の相続税を納めることをいいます。
期限後申告
正規の申告時に相続税を納めていなくて、期限後に改めて申告することをいいます。
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