終活・相続・遺言・家族信託の行政書士下山たかし事務所
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家族信託の主な関係者

家族信託では主に、信託当事者である「委託者」「受託者」「受益者」の3人と、受益者を保護する立場として「信託監督人」「受益者代理人」が登場します。
ここでは、それぞれの役割をみていきたいと思います。

家族信託の主な関係者

目次

1.委託者

「委託者」は、家族信託の目的を定め、そのために必要な財産を提供する人のことをいいます。家族信託は、委託者が、ある人の役に立つように、どの財産をどのように利用するかを考え、それを信頼できる相手に託することから始まります。

委託者に関する資格について、法律上の定めは特になく、基本的には誰でもなることができます。ただし家族信託は、委託者とこの後に説明する受託者の間の契約で行われることが一般的であるため、契約行為ができるだけの能力が必要とされます。未成年者であったり、認知症が疑われるような場合には注意が必要です。

委託者は、信託事務の処理状況等について報告を求める権利や、受託者を選任・解任する権利など、様々な権利を有しています。

2.受託者

「受託者」は、定められた目的達成のために、委託者から預かった財産の管理や運用、処分などを行う人のことをいいます。家族信託の仕組みの中で最も活動的で中心的な役割を果たします。

受託者は、未成年者、成年被後見人、被保佐人以外であれば、人(自然人)だけでなく法人もなることができます。ただし、受託者を引き受けることをビジネスとして行うのは、資格ある会社(信託銀行等)に限定されます。

受託者は信託の目的達成のために必要な行為をする権限を持っていますが、信託契約の中で制限を加えることも可能です。

受託者の義務

一方で受託者には法律により様々な責任、義務が課せられています。

(1)信託債務についての無限責任
信託行為を行ううえで受託者の責任で発生した負債について、信託財産の範囲で返済できない場合には、受託者個人の財産で支払う責任を負います。

(2)信託事務遂行義務
受託者は信託の目的達成のために事務を完遂することが義務付けられます。

(3)自己執行義務
受託者は、基本的には自ら信託事務を行う必要がありますが、信託事務を第三者に委託することを認める契約の定めがある場合などは、第三者への委託も可能です。

(4)善管注意義務
受託者が業務を行うにあたって求められる注意義務は、自分の財産と同じように扱うだけでは足りず、それを専門とする職業や地位にある者が通常求められる程度の注意(善管注意義務)を持ってあたる必要があります。

(5)忠実義務
受託者はもっぱら受益者の利益のためにのみ行動すべきであるという原則のことです。受託者は受益者の利益と相反する、あるいは競合する行為が禁じられています。

(6)公平義務
一つの信託に複数の受益者がいる場合に、受託者は、これらの受益者を公平に扱う義務があります。

(7)分別管理義務
受託者は、信託財産と受託者自身の固有財産を区別して管理しなければなりません。

(8)帳簿等の作成義務
受託者は、年に1回、信託財産について貸借対照表等の書類を作成し、受益者に報告する義務があります。書類は10年間保存する必要があります。

3.受益者

「受益者」とは、家族信託によって生じた様々な利益を得る権利(受益権)を有する人のことをいいます。

受益者になることができる人について特別な定めはなく、民法上の権利を有することができるものであれば、胎児や法人も受益者になれます。

「受益権」は、受託者が受益者に対し、信託財産に属する財産の引渡しやその他の信託財産に係る給付をすべきものであり、受益者から見れば、受託者に対し一定の行為を求めることができる権利などとされています。
これにより受益者には、契約に従って財産を受け取る権利や、信託に関する事柄を決める権利、報告を求める権利などが認められています。

4.信託監督人

「信託監督人」とは、受託者を監視監督する立場の人で、受益者のために受益者の権利を行使することができます。
例えば、認知症の人や高齢者、障害者、未成年者が受益者である場合など、受益者自身が受託者を監督することが困難な場合に信託監督人が選任されます。

信託監督人は、契約で定められていない場合でも、必要に応じて利害関係者が裁判所に請求して信託監督人の選任をうけることができます。

5.受益者代理人

「受益者代理人」は、受益者を代理して受益者の権利に関する一切の行為をする権限を有する人です。
受益者代理人は、受益者が適切に意思表示できなかったり、あるいは受益者が特定多数であったりするために、受益者による権利行使が困難な場合に、受益者の保護および信託事務の円滑な処理を図るために設けられます。

受益者代理人は、信託契約で定める必要があり、裁判所による指定選任は認められていません。

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