年老いてきたことで所有するアパート等の事業用不動産の管理が負担になってきた場合や、自分が亡くなった後に残された家族の生活資金を確保しておくための対策として活用されるのが家族信託です。家族信託を設定するためには「信託目的」を必ず定める必要があります。
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信託目的とは、家族信託で実現したい目的です。受託者が何をしなければいけないのか、受託者が行う事務処理の指針、基準となるものであり、できるだけ具体的な目的を定めることが求められます。
受託者にとって、この信託目的は絶対的なものです。例え委託者からの指示や受益者からの要望であっても信託目的と異なるものには応えることができません。
家族信託の信託目的は、多くの場合、次の2つに大別されます。
①受益者の安定した生活の支援と福祉の確保
②信託財産の適正な管理と確実な承継
例えば認知症になった親(受益者)が安心した生活を確保することを目的として、次のような信託目的が考えられます。
「信託財産を管理し、これを定期的に受益者に給付し、これまでと同様の受益者の安定した生活および福祉を確保することを目的とする」
例えばアパートのオーナーが認知症になった後も適切な管理が行われ、さらには希望した後継者に確実に引継がれることを目的として、次のような信託目的が考えられます。
「信託財産の適正な管理運用を通じて資産の有効活用を図るとともに、信託不動産につき「○○家」の資産として適切な承継を図ることとし、かねて受益者らの安定した生活と福祉を確保することを目的とする」
「身上監護」とは、相手の生活、治療、療養、介護に関する法律行為を行うことをいいます。例えば、認知症の親に代わって子が入院や介護施設への入居手続きを行うよな場合です。
家族信託において、信託目的に身上監護にかかわる事柄を盛り込むことができるかというと、信託は基本的には財産管理に関する制度であり、身上監護にかかわる内容を盛り込むことは、本来の信託制度から外れるものであり、認められません。
もし、受益者の身上監護にかかわることを引き受けるのであれば、家族信託契約とは別に、任意後見契約等を締結することになります。
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