終活・相続・遺言・家族信託の行政書士下山たかし事務所
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贈与税の支払いを減らせる特例について

贈与税の特例について

目次

相続の生前対策として活用される贈与と贈与税の基本については、「贈与と贈与税の基本」で解説しています。
ここでは、贈与税を節約できる各種控除、優遇制度についてみていきます。

1.贈与税の配偶者控除

一定の要件のもとに、配偶者から居住用不動産またはその購入資金を贈与された場合に、贈与税の課税価格から2,000万円(最高限度)を控除できるというものです。
この規定は、配偶者死後の生活の保障であること、夫婦間の贈与は同一世代間の贈与であることを趣旨としています。
また、配偶者控除後の金額からさらに基礎控除(110万円)を控除することができます。

(1)贈与税の配偶者控除の適用要件

①婚姻期間が20年以上であること
婚姻期間の判定は結婚の届出の日から贈与の日までの期間によります、したがって入籍していない期間は含まれません。内縁関係の場合は適用外、また婚姻期間に1年未満の端数があるときは、その端数は切り捨てます。

②居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭の贈与であること
居住用不動産の範囲は国内にある居住用の土地、借地権または家屋です。また、土地のみ家屋のみの贈与も対象となり、増築も家屋の取得に含まれます。

③一定の事項を記載し、一定の書類を添付した申告書を提出すること
この特例を受けた場合には、翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしなければなりません。
配偶者控除適用を受けるためには、税額がゼロでも申告が必要です。

(2)贈与税の配偶者控除適用上の注意点

①贈与を受けた居住用不動産の価格が2,000万円未満で、控除できない金額がある場合でも、他の贈与財産の価格から控除したり、限度額に満たない金額を翌年以降に繰越して控除することはできません。

②同じ配偶者から贈与を受けた財産について、以前にもこの特例を適用している場合は適用できません。

③贈与の日から3年以内に贈与した配偶者が亡くなり、この特例の適用を受けた者が財産を相続した場合の相続開始前3年以内の贈与加算については、この特例による控除額以外の部分が加算されます(特例対象部分は加算されません)。

(3)申告要件

配偶者控除の申告を受けるためには、次の申告手続きが必要になります。

贈与税の申告書への記載
①配偶者控除の適用を受ける旨およびその控除額の明細
②配偶者控除を受けようとする年の前年以前に、今回の贈与者から贈与について贈与税の配偶者控除の適用を受けていない旨

添付書類
①財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成された戸籍謄本または抄本
②財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成された戸籍の附票の写し
③居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの

2.相続時精算課税制度

この制度は、高齢者から次世代への資産移転を円滑化を促すために創設されたものです。

(1)特徴

①贈与時に2,500万円の特別控除を設け、その金額を上回る部分については贈与税を支払います。

②その後の相続時に、その贈与財産と相続財産との合計した金額をもとに計算した金額から、すでに支払った贈与税額を控除するというものです。この制度は、通常の贈与税課税制度との選択制になっています。

適用対象者
贈与者 60歳以上の者
受贈者 20歳以上の贈与者の推定相続人および孫

(2)手続き

この制度の選択を行う受贈者(子)は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、所轄税務署長に対してその旨の届出を贈与税の申告書に添付することにより行います。この選択は、受贈者が各々、贈与者(例えば父、母)ごとに選択できます。また最初の贈与の際の届出により相続時までにこの制度は継続して適用されます。提出したこの届出書は撤回することができません。

(3)適用対象財産等

贈与財産の種類、金額、贈与回数には、制限はありません。

(4)税額の計算

その贈与税の額は、この制度に係る贈与者(親)からの贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる非課税枠2,500万円(特別控除)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて計算します。(非課税枠2,500万円のうち、その年に控除しきれない部分は、翌年以降のこの制度に係る贈与者からの贈与財産の価額の合計額から控除します。選択をした年以降、この制度に係る贈与者からの贈与財産の価額の合計からは基礎控除110万円は控除できません)。

(5)相続税額の計算

この制度の選択をした受贈者(子)は、この制度に係る贈与者(親)からの相続時に、それまでの贈与財産と相続財産とを合算して計算した課税価格に基づき相続税額を計算します。その算出された相続税額からすでに支払ったこの制度による贈与税相当額を控除します。その際、相続税額から控除しきれない金額は申告により還付されます。なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の時価とされます。

(6)住宅取得資金等に係る相続時清算制度の特例

相続時精算課税制度は、自己の居住の用に供する一定の家屋を取得する資金、または自己の居住の用に供する家屋の一定の増改築のための資金の贈与を受ける場合には、60歳未満の親からの贈与についても適用されます(受贈者の年齢要件は通常の相続時精算課税制度と同じ20歳以上)。

3.住宅取得等資金に係る贈与税非課税処置

2021年12月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属からの自己の居住のための住宅の新築もしくは取得や増改築のための金銭(住宅取得資金)の贈与を受けた場合、一定の金額までの贈与税が非課税となります。

(1)非課税限度額

契約期年が2021年4月から2021年12月の場合
質の高い住宅※ 1,200万円
一般住宅 700万円

※質の高い住宅:省エネルギー性の高い住宅、耐震性の高い住宅、バリアフリー性の高い住宅のいずれかの性のを満たす住宅

(2)受贈者の適用要件

①贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上であること
②贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること
③贈与を受けた年の翌年の3月15日までに住宅取得等資金の全額を使って住宅用家屋の新築、取得または増改築をすること
④贈与を受けた年の翌年の3月15日までにその家屋に居住すること、またはその見込があること

(3)家屋の要件

①新築、取得、増改築
②床面積50㎡以上240㎡以下、床面積の2分の1以上が専ら居住の用に供すること
③中古の場合は、築20年以内(耐火建築物は25年)

(4)他制度との併用

暦年課税(基礎控除110万円)、相続時精算課税制度(特別控除2,500万円)との併用可能

4.直系尊属からの教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税処置(教育資金の非課税)

高齢者が保有する資産を若年世代に移転させるとともに、教育・人材育成をサポートするため、子や孫に対する教育資金の一括贈与に係る贈与税について、子・孫ごとに1,500万円までを非課税とする処置です。

(1)制度の概要

①適用期間
2013年4月1日から2023年3月31日までの間。

②非課税拠出額
贈与者である直系尊属が、金融機関に受贈者である子・孫(養子を含む)名義の口座等を開設し、教育資金を一括して拠出した場合、この資金について、子・孫ごとに1,500万円まで贈与税が非課税となります「。

③教育資金の範囲
学校などへの入学金や授業料、学校以外の塾や習い事の月謝等とし、学校以外のものに支払われるものについては500万円が限度となります。

ただし、学校以外に支払う費用において、贈与を受ける者が23歳となった日の翌日以降に支払われるものについては、教育訓練給付金の支給対象となる訓練費用に限られます。

④教育資金の使途
金融機関が領収書等をチェックし、書類を保管します。

⑤子・孫が30歳に他する日には口座等は終了し、使い残しや教育資金以外の支払いに充てられた金銭があれば、その残額がその契約が終了した日の属する年に贈与があったこととされ贈与税が課税されます。

⑥口座の開設
この非課税制度の適用を受けるためには、教育資金口座の開設等を行ったうえで、教育資金非課税申告書をその口座を開設等を行った金融機関等(銀行、証券会社など)の営業所等を経由して、預入等をする日までに、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。なお、口座は受贈者1人いつき、1つの金融機関しか開設できません。

⑦再拠出
適用期間内かつ非課税拠出額の限度額の範囲内であれば、同一の金融機関の口座において資金の再拠出(複数回の贈与)を行うことができます。

⑧受贈者の所得要件
2019年4月1日以降の贈与に対しては、受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、本特例の適用を受けることができなくなりました。

(2)2021年の税制改正における変更点

2021年の税制改正により、贈与者が死亡した場合の残高に対する相続税課税について、以下のとおり取り扱うことになりました。

①相続とみなされるケース
この制度の利用を開始し、契約が終了する日までの間に贈与者が死亡した場合は、その死亡の日における管理残額について、相続等により取得したものとみなすこととされました。

ただし、受贈者が以下に該当する場合は対象外になります。
・贈与者が死亡した日に23歳未満である場合
・贈与者が死亡した日に学校等に在学している場合
・贈与者が死亡した日に教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合

②孫に対する相続は2割加算となる
上記のケースで、贈与を受ける者が孫であった場合、相続税額について、相続税額の2割加算の対象です。

この改正点については、2021年4月1日以降の贈与および相続税について適用されます。

5.結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

2015年4月1日から2023年3月31日までの間に、結婚・子育て資金を一括贈与する場合、1,000万円までは非課税とします。

贈与者
父母、祖父母等の直系尊属

受贈者
20歳以上50歳未満の子、孫等

2019年4月1日以降の贈与については、受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、本特例の適用を受けることができません。

非課税
受贈者ごとに1,000万円
結婚関係で支払わるものについては300万円を限度

手続き
受贈者名義の金融機関の口座等に資金を一括で拠出

贈与者死亡時
死亡時における残高を相続税の課税価格に加算する。
受贈者が孫等である場合で、2021年4月1日以後にその贈与者から取得をした資金がある場合には、その取得分に対応する残額に相当する相続税額について、相続税額の2割加算の規定が適用されます。