推定相続人とは、ある人が亡くなって相続が発生したとした場合に、相続人となる見込みの人を言います。相続財産を遺す人、すなわち被相続人の意思によって、この「推定相続人」から相続権を奪う制度を「推定相続人の廃除」といいます。
ただし、廃除の対象となるのは、「遺留分を有する推定相続人」に限られ、具体的には被相続人の兄弟姉妹は遺留分を持たないため廃除の対象にはなりません。
廃除の手続きは、家庭裁判所に対する申立てにより行い、調停若しくは審判を経て、認められれば被廃除者の相続権は失われます。
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「推定相続人の廃除」とは、被相続人となる人の意思によって推定相続人の相続権を奪う制度であり、推定相続人に一定の事情があるときには、その廃除を家庭裁判所に請求することができます。
また、遺言による資産配分によってもある程度同様の法的効果が生まれますが、遺言だけでは遺留分の権利までは奪えないので、遺留分の権利まで奪いたい場合にこの制度が有効になってきます。
「推定相続人の廃除」が認められるためには、被廃除者が「遺留分を有する推定相続人」であることと、以下のいずれかの廃除に値する事情があることが必要となります。
①被相続人に虐待をしたこと
例えば、夫が妻に対して傷害を負わせたり、脅迫する行為などは、「虐待」に当たる可能性があります。
②被相続人に重大な侮辱を与えたこと
例えば、子が親に対して「早く死んでしまえ」と繰り返し暴言を吐くなどする場合は、「重大な侮辱」に当たる可能性があります。
③推定相続人にその他の著しい非行があったこと
例えば、被相続人の所有不動産を無断で処分することにより公正証書原本不実記載の有罪判決が確定しているような場合や、浪費などにより多大な迷惑をかけるような場合は、「著しい非行」に当たる可能性があります。
「推定相続人の廃除」が認められた場合には、推定相続人はすべての相続権を失い、何も相続できないこととなります。
ただし、「推定相続人の廃除の取消し」が行われた場合、相続権は回復し相続人の地位が復活します。
また、被廃除者が排除された後に被相続人の養子になった場合も、通説では、被相続人には廃除者に相続させる意思があり、被廃除者は新たな身分を取得したとみられるので相続権を取得するとされています。
被相続人となる人が生前に家庭裁判所へ請求することにより、調停又は審判が行われます。
そして、調停又は審判で認められると推定相続人は直ちに相続権を失います。
また、推定相続人の廃除が認められた場合、その者の戸籍の身分事項欄に廃除された旨の記載がなされます。
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思表示をした時は、遺言執行者は、その相続開始後、遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければなりません。遺言書により廃除を行う場合は、遺言執行者を指定しておく必要があります。
そして、廃除は被相続人の死亡時に遡ってその効力が生じます。
廃除された推定相続人は初めから相続人ではなかったものとされ、遺留分の権利もすべて失うため、廃除された者を除外した遺産分割をスムーズに進めることができます。
廃除対象者が同意しない場合や、所在不明の場合でも、手続きを進めることができます。
廃除の方法としては、被相続人が生前に行う生前廃除と、遺言によって行う遺言廃除があります。
いずれの方法も家庭裁判所に申し立てて調停・審判を行う必要があります。
推定相続人の廃除は法的効果が多大となるため、廃除が認められるには、以下のいずれかの事由に該当する必要があります。
上記以外に、①被相続人の殺害等、②殺害の不告発者等、③詐欺・脅迫による被相続人の遺言等の妨害者、④被相続人の遺言等についての詐欺・脅迫者、⑤被相続人の遺言の偽造者等は欠格事由に当たり、「相続欠格」の効果が当然に生じることとなります。
被廃除者の子の相続権については、廃除の効果は被廃除者の子には影響しないため、被廃除者に子(被相続人の孫)がいれば、相続の時はその被相続人の孫が被廃除者の相続分を代襲相続します。
被相続人は、生前でも遺言によってでも廃除の取消請求をいつでもすることができますが、権利関係を明確にするためにも家庭裁判所の関与を必要とします。
そして、遺言による廃除に関する規定は、廃除の取消しに準用されます。
兄弟姉妹については、財産を譲渡したくない場合において、「推定相続人の廃除」をしなくても、遺言書を作成することにより相続分を奪うことができます。
廃除された推定相続人が死亡した場合、その代襲相続人には廃除の効果が及ばないため、その代襲相続人からの相続権の主張を否定できません。
遺言で廃除する場合、遺言執行者を定めておかないと、円滑・適正な遺言執行が妨げられる恐れがあります。
遺言執行者とは、遺言書の内容を具体的に実現する人をいい、遺言で指定される場合と家庭裁判所により選任される場合とがあります。
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