共同相続人の中に、被相続人(亡くなった人)の財産の維持又は増加に特別の寄与(=貢献)をした人があるときに、遺産分割の際に、その人が寄与した分を多く分配することがあります。これは共同相続人間の公平を図るための制度で寄与分といいます。
なお、平成30年の民法及び家事事件手続法の改正において相続人以外の親族の特別寄与に関する規定が設けられています。
目次
共同相続人中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした人があるときに、相続財産からその人の寄与分を差し引いたたものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をその人の相続分とすることによって、その人に相続財産のうちから相当額の財産を取得させ、共同相続人間の公平を図る制度を寄与分といいます。
寄与分が存在する場合には、相続財産の一定割合又は金額を相続財産から控除してこれを当該相続人が相続分と共に受け取ることになります。
被相続人の財産の維持又は増加に特別の貢献をした共同相続人が相続分以外に相続財産の一定割合や金銭を相続財産として取得することにより、相続人間の実質的公平を図ることができる。
遺産分割の前提問題であるため、遺産分割協議後の主張は認められません。
寄与分については、遺産分割の中で主張されることが多いですが、独立して寄与分の調停、審判を求めることができます。調停に関しては、遺産分割の調停又は審判の係属の有無にかかわらず、相続開始から遺産分割の終了までの間、申し立てることができます。審判に関しては、当該被相続人に関する遺産分割の審判事件が家庭裁判所に係属している必要があります。家庭裁判所は、遺産分割の審判手続きにおいて、寄与分を定める処分の審判の申立期間(1カ月以上の期間)を定めることができることになっています。
寄与分の主張が認められるためには、被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度を超える貢献(特別の寄与)が必要です。
寄与分に関しては、「特別の寄与」に該当するか、「被相続人の遺産が維持又は増加した」といえるか、寄与分に該当するか否かについて主張が分かれることが多いですが、具体的な立証が困難な場合も多く、必然的に紛争が長期化することが多いので、注意が必要です。
寄与分の計算に当たっては、まず、被相続人が相続開始時に有していた積極財産(債務を控除しないもの)の価額から寄与分額を控除した計算上の財産を差し引きます。この、差し引かれた残りの財産を「みなし相続財産」といいます。
次に、「みなし相続財産」に各相続人の相続分を乗じて一応の相続分を算定し、その上で、寄与相続人については、この相続分に寄与分を加えた額をもってその人の具体的相続分とします。
被相続人Aは、4000万円の財産を残して死亡しました。Aの相続人には、妻B、長男C、長女Dがいます。Cに1000万円の寄与分が認められる場合、各相続人の具体的相続分はどうなりますか。
①みなし相続財産の計算
4000万円-1000万円=3000万円
②各相続人の相続分を乗じた額(一応の相続分)
B 3000万円×1/2=1500万円
C、D 3000万円×1/2×1/2=750万円
③具体的相続分
B 1500万円
C 750万円+1000万円=1750万円
D 750万円
寄与分は、具体的な相続分算定のための修正要素であるから、寄与分が認められるのは相続人に限られます。
被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度を超える貢献が必要であるとされています。夫婦間の協力扶助義務(民752)、親族間の扶養義務・互助義務(民877①)の範囲内の行為は、特別の寄与に当たりませんので、注意が必要です。
寄与分として認められるためには、数学的な評価ができることが必要です。そのため、相続人の行為が被相続人のためになされたとしても、その行為によって被相続人の遺産が維持又は増加されたといえる場合でなければ、寄与分として認められませんので、注意が必要です。
寄与行為が財産上の効果と結びつかなければ、相続分に影響を与えることにはなりません。したがって、精神的な援助、協力が存在するだけでは、寄与分は認められませんので、注意が必要です。
寄与分については、遺産分割手続の中で主張されることが多いですが、独立して寄与分の調停、審判を求めることができます。
寄与分を定める審判に関しては、当該被相続人に関する遺産分割の審判事件が家庭裁判所に係属している必要があります。家庭裁判所は、遺産分割の審判手続において、寄与分を定める処分の審判の申立期間(1カ月以上の期間)を定めることができることになっています。調停段階で寄与分の主張をしていたにもかかわらず、調停が不成立となり、審判手続に移行してからも寄与分を定める審判の申立てをしない場合、特に遺産分割審判の心理が終結間近になってから寄与分を定める審判の申立てがなされた場合、遺産分割審判が遅延することになってしまうことから、遅延防止のために、寄与分を定める審判の申立期間を制限することができるようにしたものです。
実際に、遺産分割の審判と寄与分を定める審判が係属した場合には、一括処理のため、心理手続及び審判の併合が義務付けられています。
寄与分を定める調停に関しては、審判の場合と異なり、遺産分割の調停又は審判の係属の有無にかかわらず、相続開始から遺産分割の終了までの間、申し立てることができます。
もっとも、遺産分割が調停が申し立てられている場合には、一括処理の観点から、調停手続き及び調停の併合が義務付けられています。
特別寄与人は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与人の寄与に応じた額の金銭である特別寄与料の支払いを請求することができます。
特別寄与人とは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした人及び相続人の欠格事由(民1050①)に該当し又は廃除によってその相続権を失った人を除きます)をいいます。
特別寄与人は、特別寄与料の支払いについて、当事者間の協議が調わないとき、当事者間で協議することができないときに、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。特別の寄与に関する処分の審判事件の管轄は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所となります。
この請求は、特別寄与人が相続開始及び相続人を知った時から6カ月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、請求することができません。
特別寄与料の額は、家庭裁判所が、①寄与の時期、②方法及び程度、③相続財産の額そのた一切の事情を考慮して定めます。ただし、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません。
家庭裁判所は、特別の寄与に関する処分の審判において、当事者に対し、金銭の支払いを命ずることができます。
相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に当該相続人の相続分(法定相続分、代襲相続人の相続分、遺言による相続分の指定)を乗じた額を負担することとなります。
なお、特別寄与人は、特別寄与料の額を被相続人から遺贈により取得したとみなして相続税が課税され、当該相続人が支払うべき特別寄与料の額は、当該相続人の課税価格から控除されることになります。
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