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自筆証書遺言の署名・押印の方法と注意点

自筆証書遺言が遺言として法的に有効とされるためには、①全文を自書している、②日付の記載がある、③署名・押印がされているの3つの要件を満たす必要があります。
ここでは、このうち署名・押印の方法とその注意点について詳しくみていきます。

自筆証書遺言の署名・押印の方法と注意点

目次

1 署名・押印の意義

遺言は、遺言者が一人で行う単独行為であるため、法律(民法)によりその作成方法について厳密な要件が定められています。自筆証書遺言では、全文、日付及び氏名を自書し、これに押印しなければならないとしています。そして、署名と押印は、遺言者が誰であるかということ、及び、遺言者が間違いなく自分の意思で遺言書を作成したこと、を明らかにするために原則として遺言者自らなすことが求められています。
なお、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書は不要ですが、ページ毎に署名、押印をする必要があります。

2 署名の方法

署名は「氏名の自書」とある以上、姓名共に書くことが原則ですが、遺言者が誰であるかを知ることができ、他人と混同することがなければ、必ずしも姓名を共に書かなくてもよいとされています。過去の判例では、署名が姓のない名前のみであった事例でも有効であるとしたものがありますが、姓だけでは同じ姓の他の家族と混同されるおそれがあるので、姓だけの署名は避けておいた方がよいでしょう。
また、氏名は戸籍上の氏名と同一でなくてもよく、遺言者が通常使用していた通称、芸名、ペンネーム等でも、それが遺言者と同一性を有することが示されていれば足りるとされています。

3 押印の要否

最近は官公庁に提出する書類でも署名のみで事足りる場面が増えてきていますが、自筆証書遺言の場合は、民法に押印をすることが明文で定められているため、法律の改定がない限り押印は必要となります。

4 押印の種類

(1)印鑑は実印が必要?

使用される印鑑に特に指定はなく、実印でも認印でも構いません。

(2)指印ではだめ?

押印が指印であった自筆証書遺言を有効と認めた判例があります。よって、押印が指印であることをもって直ちに遺言が無効になることはないといえますが、無用な争いを避けるためには印鑑による押印をするのが無難であると考えます。

(3)花押の可否

花押とは、書判(かきはん)などとも呼ばれ、署名の代わりに使用される記号や符号をいいます。
押印がなく、署名と花押が記されていた遺言の有効性が争われた裁判がありましたが、最終的には花押は押印とは認められないとの結論になっています。

5 押印の場所

押印の場所は、遺言を記載した文書に署名し、その署名の下に押印するのが通常です。
遺言書本文の入れられた封筒の封じ目にされた押印が裁判で有効と認められた事例もありますが、遺言を確実なものにするには、文書に記載された署名の下に押印しておくべきと考えます。

6 契印の要否

契約書などの文書が複数枚に渡る場合、一体の文書であることを証するために用紙の間に押される印のことを契印といいます。
遺言書では契印は必要とはされておらず、遺言書が複数枚に渡る場合でその間に契印がなくても、その内容・外面等から見て1通の遺言書であることが確認できれば、遺言書は無効となりません。
ただしこれも、遺言を確実なものにするためには、契印や編綴を行っておくのが無難といえるでしょう。

7 他人による押印の効果

法律では「遺言者が」「これに印を押さなければならない」(民968①)としている以上、原則として遺言者が自ら押印しなければならず、遺言者と無関係に他人が押印した遺言は無効であると考えられます。
中には他人による押印を有効とした判例もありますが、これはあくまでも限定的、例外的に認められたと考えるべきで、遺言者による押印が原則である以上、特段の事情がある場合を除いて、遺言者による押印を行うのが確実な方法であると考えます。

8 まとめ

署名・押印については、条件を広くとらえる判例も存在しますが、法律が遺言の厳格な形式を定めていることからすると、遺言者自身によって署名押印をした方が、間違いがないことは言うまでもありません。署名押印等の要式面で間違いがないようにするには、公正証書遺言による遺言方式を選ぶのがより確実と言えます。

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