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遺言にはどんな種類、方式があるのでしょうか。
遺言の方式は法律(民法)で定められており、全部で次の7種類があります。
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
危急時遺言 死亡危急時遺言
難船時遺言
隔絶地遺言 伝染病隔離時遺言
在船時遺言
特別方式は、病気で死亡が差し迫っているとか、船の遭難や伝染病など、普通方式の遺言の利用が困難な場合の特別処置になります。
一般的に利用される方式ではありませんので、ここでは普通方式に絞って説明していきます。
自筆証書遺言は、遺言者本人が、遺言書の全文、日付および氏名を自書(手書き)して、これに印を押す方式です。自分が好きな時にいつでも簡単に作成でき、役所に行ったりする必要がなく、費用もかからないため、一番手軽に作成できる方式です。
財産目録など、遺言書に添付する資料作成にはワープロやコピーが使えますが、本文は必ず本人の自書(手書き)でなければなりません。
遺言者に法律的な知識がない場合には、内容が不明であったり、法律上定められた方式に沿わないことが起こりやすく、遺言の効力をめぐって紛争が生じることがあります。
保管方法についても特に決まりはないため、遺言者の死後に遺言書がみつからなかったり、数年たってから遺言書がみつかるといったこともあります。
自筆証書遺言の保管に関する問題を低減するため、2020年7月10日より国(法務局)による新たな保管制度が開始されています。
また、遺言者の死後、開封前に家庭裁判所で、遺言者本人が間違いなく作成したものかを確認する検認手続きが必要になります。
自分の好きな時に、何回でも作成できる
内容を誰にも知られずに作成できる
費用がかからない
形式に不備があれば無効となってしまう
紛失や遺言者の死後に偽造・変造、破棄、隠匿されるおそれがある
家庭裁判所の検認が必要
公正証書遺言は、公証人役場の公証人によって作成される遺言で、次のような手順で作成されます。
法律の専門家である公証人が作成するので、形式の不備により無効になることはほとんどありません。
また、遺言書の原本は公証人役場に保管されるため、紛失や偽造、破棄、隠匿といった心配がなく、家庭裁判所の検認も必要ありません。
しかし、遺言者、証人が公証人役場に出向いたり、印鑑証明、遺産目録、相続人・受遺者の戸籍謄本等を用意する手間と、公証人役場に支払う費用が発生します。
形式不備となるリスクが低い
紛失、偽造・破棄・隠匿の心配がない
家庭裁判所の検認手続きが不要
作成するのに手間、時間がかかる
内容を他人に知られてしまう
費用がかかる
秘密証書遺言は、遺言者が作成して封印した遺言書を、本人および証人2人以上が公証人役場で、公証人に間違いなく本人が作成したものであることを公証してもらう方式です。
遺言書の全文、日付は自書(手書き)である必要はなく、パソコンなどを使ったても構いませんが、署名だけは自書でなければなりません。
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にできるといったメリットがありますが、公証人は遺言書の内容までは確認をしないので遺言の形式に不備が生じる危険性があります。また、二人以上の証人が必要で、費用もかかり、家庭裁判所の検認の手続きが必要です。
遺言書の保管も自分で行う必要があります。
パソコン・ワープロで署名を除く本文を作成できる
誰にも内容を知られずに作成できる
形式に不備があれば無効となってしまう
公証人役場に行く、証人を準備するといった手間と費用がかかる
家庭裁判所の検認手続きが不要
遺言を遺す最大の目的は、遺言者の死後に遺言の内容を実現することにあります。
そういった意味では、形式の不備により無効となってしまう可能性のある自筆証書遺言、秘密証書遺言はお勧めできません。特に手間、費用がかかる秘密証書遺言は、一般的にもほとんど利用されていません。
遺言内容を実現する一番確実は方式は、公正証書遺言になります。