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遺贈とは、遺言によって財産の全部または一部を無償で他人に与える行為のことをいいます。
遺贈によって利益を受ける人のことを受遺者(じゅいしゃ)といいます。
法人や胎児を含め、受遺者には誰でもなることができますが、相続欠格者は受遺者にはなれません。
従って、自分の死後に相続人以外の者に財産を譲りたい場合には、遺言を作成して遺贈を行う必要があります。
ただし、特定の相続人には遺留分の権利がありますので、受遺者が遺留分侵害請求を受けた場合には、侵害した部分について補償しなければなりません。
特定遺贈とは、遺産中の特定財産を与えるものです。例えば〇〇の土地・建物とか、○○銀行の口座番号××の預金といった特定物や、土地5筆、株券1,000万円分といった不特定物の場合もあります。
包括遺贈とは、遺産の全部または一定の割合(例えば遺産の1/2等)で示された部分を与えるものです。
包括遺贈の受遺者は、相続人と同一の権利義務を有することになるため、債務についても引き継ぐことになります。
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈を放棄することができます。その放棄は遺言者の死亡時にさかのぼって効力を生じます。
包括遺贈の場合は、自己のために包括遺贈があることを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して放棄の申述をしないと、承認したものとみなされます。
特定遺贈の場合は期間制限はなく、受遺者はいつでも放棄できます。
しかし、受遺者がいつまでも承認・放棄の決定をしないでいると、催告権のある遺贈義務者(多くは相続人)やその他利害関係人から、相当の期間内に意思表示を求められ、期間を過ぎると承認したとみなされてしまいます。
遺言そのものは効力を生じていても、次のような場合には遺贈は効力を生じません。
例えば、不倫や妾関係の女性への遺贈は、その目的がそうした関係の開始・維持・継続・復活などを図るためであれば、公序良俗違反として無効にされる場合があります。
遺言者の死亡によって遺贈の効力が生じ、遺贈の目的物の権利義務が遺言者から受遺者に法律上移転します。
遺贈義務者(相続人または遺言執行者など)は、遺贈の目的物を受遺者に引き渡す義務があります。
包括遺贈の場合は、他の相続人と同列の扱いになりますので、遺産分割協議を通じて遺贈の実現を請求することになります。
遺贈によって不動産を取得した場合には、所有権移転登記をしないと第三者に対抗できません。そして遺贈の登記は、受遺者と、相続人または遺言執行者が共同で登記申請をする必要があります。
遺留分を侵害があると、相続人から遺留分侵害請求をうけ、受遺者は遺留分を補償しなければなりません。遺贈をする場合は、相続人の遺留分に注意する必要があります。
相続人以外を受遺者とする場合、遺産分割協議でのトラブルを避けるためにも、特定遺贈にしておくことが良いでしょう。
遺言執行者の指定がない場合、遺贈義務者は相続人全員になります。スムーズな遺贈を執行するためには遺言執行者を指定しておくのが良いでしょう。