自筆証書遺言は、手軽に作成できるというメリットがある反面、紛失や変造、隠蔽といったリスクや、家庭裁判所による検認手続きが必要になるといったデメリットもあります。
国は、遺言の普及をはかるため、これらのデメリットをカバーする制度として自筆証書遺言書保管制度を2020年7月から開始しています。
今回は、自筆証書遺言書保管制度の保管申請手続きについて解説します。
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自筆証書遺言書保管制度とは
目次
1.自筆証書遺言書を作成する
⇩
2.申請書を作成する
⇩
3.保管の申請の予約をする
⇩
4.保管の申請をする
⇩
5.保管証を受け取る
保管制度を利用するには特別な様式が決まっている
有効な自筆証書遺言書を作成するには、①本文はすべて自書する、②作成年月日の記載がある、③署名・捺印があるといった様式が法律(民法)で定められていますが、用紙については特に規定はありません。大きさがA4やB5であろうが、ノートの切れ端であっても、必要な要件を満たしていれば有効な遺言と認められます。
ただし、保管制度を利用するには、用紙の大きさや余白などに条件が決められていますので注意が必要です。
保管制度利用可能な様式
用紙 A4サイズ(タテ297mm×ヨコ210mm)
文字の判読を妨げるような地紋、彩色等のないもの
余白 上側 5mm以上
下側 10mm以上
左側 20mm以上
右側 5mm以上
余白部分および裏面には何も記載されていないこと
遺言本文だけでなく、財産目録等を記載した別紙を添付する場合も同様です。
このように細かく規定されているのは、原本を綴じる際に穴を開ける必要があることと、スキャナーで読み取る際に読み取れない部分が発生しないようにするためです。
どこの保管所に申請するかは条件がある
遺言書の保管を行う遺言書保管所は、全国の法務局および支所にありますが、遺言者が保管申請ができる保管所は次から選ぶことになります。
・遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
・遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
・遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所
ただし、既に他の遺言書を遺言書保管所に預けている場合には、その遺言書保管所になります。
申請書の様式は、法務省ホームページからダウンロード、または各法務局(遺言書保管所)窓口にて入手します。
申請書の作成を専門家に依頼する場合は、司法書士法第3条第1項第2号が定める「法務局又は地方法務局に提出する書類」に該当し、司法書士の専属業務に当たるため、司法書士に依頼する必要があります。
保管の申請手続きをするには、必ず事前に予約を行い、遺言者本人が遺言書保管所に出向いて行う必要があります。
予約の方法は次の3つです。
(1)法務局手続き案内予約サービスの専用ホームページから予約する
受付時間 24時間、365日対応
(2)法務局(遺言書保管所)へ電話して予約する
受付時間 平日8:30~17:15まで(土・日・祝日・年末年始は除く)
(3)法務局(遺言書保管所)に直接出向いて予約する
受付時間 平日8:30~17:15まで(土・日・祝日・年末年始は除く)
4.で予約した日時に、遺言者本人が遺言書保管所に出向いて申請手続きを行います。
手続の際、必要となるものは次の5つです。
(1)遺言書
複数枚の場合、ホチキス止めはしない
封筒も不要
(2)3.で作成した申請書
(3)本籍の記載のある住民票の写し(作成後3カ月以内のもの)
申請者本人の記載があるもので大丈夫です(世帯全員の記載は不要)
本籍の記載を忘れないこと
(4)本人確認書類
マイナンバーカード、運転免許証、運転履歴証明書、パスポート等
(5)手数料
遺言書1通につき3,900円
必要な金額の収入印紙を手数料納付用紙に貼る(割印不要)
保管申請手続きが完了すると、遺言者の氏名、生年月日、遺言書保管所の名称および保管番号が記載された保管証が渡されます。
保管証に記載された保管番号があると、後の手続きを行う際に手続きがスムーズにできますので、保管証は大切に保管してください。