夫婦どちらかに万一のことがあった場合に備えて、「先に死亡した者が他方に財産を相続させる」という内容の遺言を、一通の遺言書を夫婦共同でのこすことはできるのでしょうか。
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二人以上の者が同一の証紙(用紙)を用いて遺言をすることを共同遺言といいますが、この共同遺言は民法によって禁止されています。
民法第975条(共同遺言の禁止) 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
共同遺言には次のような3種類のものがあるといわれています。
前述のとおり、遺言は二人以上の者が同一の証書ですることができないとされています。従って、上記①~③の共同遺言はできないと解されています。共同遺言が禁止されている理由としては次のものが考えられています。
同一の証書で遺言を行うことが共同遺言の要件になりますので、それぞれが別々の証書を用いて作成した場合には、そもそも共同遺言には該当しません。従って、この場合はそれぞれの遺言が別々のものとして有効になります。
同一の証書に二人の遺言がなされているが、そのうちの一方に氏名を自書していないという方式違反があった場合でも、禁止された共同遺言に該当するとの判例があります(最判昭56.9.11)。つまり、この場合は、方式違反がない他方の遺言についても有効な単独遺言として扱われないということになります。
一見したところ共同遺言としての形式になっていても、その内容からすると単独の遺言と評価できるので有効であるとする判例があります(東京高決昭57.8.27)。これは、遺言の内容としては一人の財産の処分に関するものであり、その他のもう一人の部分は法律上の意味を持たないことから、実質的には単独遺言と評価することができることを理由としています。
一通の証書に妻及び夫の遺言が記載されている場合であっても、両者が容易に切り離すことができる場合には共同遺言には該当しないとする判例があります(最判平5.10.19)。
この場合は、同一の証書に遺言がなされたわけではありませんから、共同遺言には該当せず有効です。
一見したところ共同遺言に見えても内容的に単独遺言と評価することができれば無効にならない可能性がありますが、無効になるリスクを考えると、夫婦であっても別々に遺言書を作成することをお勧めします。
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