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【遺言相談】孫が医学部に入ったら遺産をあげるという条件や期限をつけた遺言はできますか?

【遺言相談】孫が医学部に入ったら遺産をあげるという条件や期限をつけた遺言はできますか?

目次

相談内容

私の孫はまだ中学生ですが、将来は医者になると勉強に励んでいます。その孫が大学の医学部に進学するなら学資を支援したいと考えています。私の死後に、その孫が大学の医学部に進学したときには遺産をあげるけれども、その孫が医学部以外に進学したり、私が死んだときに大学を卒業していたときは遺産をあげないという遺言書をつくることはできるでしょうか。

回答

そのような遺言書をつくるこは可能です。
あなたの場合、「孫が将来大学の医学部に進学したときは学資(遺産)を取得させる」旨の停止条件付遺贈をする遺言書を作成することになります。この遺言によれば、お孫さんが相談者の死後に大学医学部に進学したときに条件が成就(成立)して遺言の効力が確定します。また、お孫さんが大学医学部に進学することがなかったときは遺言の効力は無効になります。

解説

1 条件とは

条件とは、法律行為の効力の発生または消滅を、将来発生するかどうか不確実な事実にかからせる制限のことをいいます。条件は、成否が不確定な点で期限と異なります。
 条件=「ジャンケンに勝ったらおやつをあげる」
 期限=「3時になったらおやつをあげる」

民法上の条件には、停止条件と解除条件があります。不法な条件や不法なことをしないことを条件とすることは無効となります。
 例 人を殺したらお金をあげる=不法な条件なので無効

停止条件とは、その成就まで法律行為の効力の発生を停止する条件のことをいいます。停止条件の付された法律行為は、停止条件が成就したときから効力を生じます。法律行為の時に、既に停止条件が成就していた場合には当該法律行為は無条件になり、既に停止条件が成就しないことが確定していた場合には当該法律行為は無効になります。また、不能の停止条件を付した法律行為は無効です。

 停止条件の例 「試験に合格したら100万円をあげる」

解除条件とは、その成就によって法律行為の効力を消滅させる条件のことをいいます。解除条件の付された法律行為は、解除条件が成就したときから効力を失います。法律行為の時に、既に解除条件が成就していた場合には当該法律行為は無効になり、既に解除条件が成就しないことが確定していた場合には当該法律行為は無条件となります。不能の解除条件を付した法律行為は無条件となります。

 解除条件の例 「試験に不合格となったら100万円をあげる約束はやめる」

2 期限とは

期限とは、法律行為の効力の発生・消滅または債務の履行を将来発生することが確実な事実の生ずるときまで延ばす制限のことをいいます。
民法上の期限は、期限到来時に法律行為の効力が発生するか消滅するかにより、始期と終期とに分けられます。すなわち、始期が付された法律行為は期限が到来したときに効力を発生し、終期が付された法律行為は期限が到来したときに効力を失います。

条件付き遺贈

遺贈をする旨の遺言にも条件をつけることができます。

1 停止条件付遺贈

遺贈の効力の発生を条件にかからせた場合、その遺贈を停止条件付遺贈といいます。
停止条件付遺贈の受遺者は、遺言者が死亡したときに停止条件付の権利を取得しますが、遺贈の履行を請求できるのは条件が成就したときになります。遺言者は、条件成就の効果を条件成就前に遡及させる旨の遺言で定めることができます。遺贈の目的が不動産の場合には、受遺者は停止条件付所有権移転請求権の仮登記をすることができます。
遺言者の死亡前に条件が成就したときは、無条件の遺贈になります。また、遺言者の死亡前に条件が成就しないことが確定していた場合は、停止条件付遺贈は無効になります。
停止条件付遺贈の受遺者が条件成就前に死亡したときは、遺贈の効力を生じません。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思表示をしているときは、その意思が優先します。

2 解除条件付遺贈

遺贈の効力の消滅を条件にかからせた場合、その遺贈を解除条件付遺贈といいます。
解除条件付遺贈の受遺者は、遺言者が死亡したときに解除条件付の権利を取得し、条件が成就したときに権利を失います。遺贈の目的が不動産の場合には、条件成就によりその不動産は遺言者の相続人が取得することになります。この場合、相続人がその不動産の取得を第三者に対抗するためには登記が必要です。

3 負担付遺贈との区別

負担付遺贈とは、法律上一定の義務を負担させる旨の制限のある遺贈のことをいいます。
負担付遺贈の受遺者は遺贈の目的物の価額を超えない限度においてのみ負担した義務を履行する義務を負います。受遺者が遺贈の放棄をしたときは負担の利益を受けるべき者は自ら受遺者となることができます。
停止条件付遺贈と負担付遺贈とは、受遺者が法的に強制可能な義務を負っているか否かで区別されます。遺言で求められている負担が法的義務ではない場合、法的義務であっても履行を強制できない場合(例えば、婚姻をすることが求められている場合)、受遺者の意思だけで実現できない場合には、その「負担」は停止条件となります。

期限付き遺贈

遺贈にも期限をつけることができます。ただし、推定相続人の廃除の遺言に始期をつけることはできません。

1 始期付遺贈

始期付遺贈とは、遺贈の効力の発生または遺贈義務の履行について期限を付した遺贈のことをいいます。始期付遺贈の場合、受遺者は遺言者が死亡したときに始期付の権利を取得しますが、その効果は期限到来のときに発生します。また、遺贈義務の履行に始期がついている場合には、受遺者は、期限が到来するまで履行を請求できません。

2 終期付遺贈

終期付遺贈とは、遺贈の効力の消滅について期限を付した遺贈のことをいいます。
終期付遺贈の場合、受遺者は遺言者が死亡したとき終期付の権利を取得し、その権利は期限が到来したときに消滅します。期限が到来した後は、その権利にかかる遺贈財産は遺言者の相続人に帰属することになります。
なお、遺産分割禁止の遺言には必ず終期をつける必要があります。

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