遺産分割を行う際、具体的な分割方法には、現物分割、代償分割、換価分割及び共有分割の4種類があります。そのうち、「現物分割」とは、遺産をあるがままの姿で分割する方法です。
遺産分割は、その性質上できる限り現物のまま相続人に受け継がせることが望ましいことから、現物分割は、遺産分割の原則となる分割方法となります。
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遺産分割の際、個々の財産の形状や性質を変更することなく分割することができ、この分割方法を現物分割といいます。
例えば、「甲はA土地を、乙はB土地を取得する」、「甲は土地を、乙は預金を取得する」といった分割方法です。
現物分割を行う場合には、具体的相続分と完全に一致する分割を行うことは不可能に近い特徴があります。不可分財産が多い場合には、特に公平な分割が困難であるといえます。
したがって、ある程度の差は容認されることが多く、場合によっては金額による調整が行われることもあり、この場合には、代償分割に似た要素を有することになります。
① 特別な手続きなしで分割できる。
② 現状のままで分割するため、換価等によるコストが発生せず、すぐに分割できる。
① 不可分財産が多い場合、公平な分割が難しい。
現物分割の場合、遺産の評価が必要となります。現金や預金のように金額が明らかなものであれば特に問題ありませんが、不動産や骨とう品等の高価な動産類、著作権等の特殊な権利関係が存在する場合、そもそもの評価額について意見が割れる可能性を秘めていますので、公平な分割を行うことが困難です。
② 相続財産価格にばらつきがある場合、遺産分割によって不利になった相続人が理解・納得していないとトラブルの原因になる。
現物分割は、例えば「甲にはA土地を、乙にはB土地を取得させる」といった分割方法です。A土地とB土地の価格が同一であれば甲乙それぞれが納得できる可能性が高いですが、A土地とB土地の価格が大きく異なるような場合、それにより不利な立場になる相続人はそもそも遺産分割協議に応じない可能性がありますし、仮にその場で応じたとしても、当該遺産分割協議の効力を争う等のトラブルに発展する可能性があります。
遺産分割は、まず相続人の協議がなされますが、協議が整わないときや協議できない場合には、家庭裁判所の調停又は審判によりその全部又は一部の分割がなされます(ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害する恐れがある場合、その一部の分割については請求をするこはできません)。
もっとも、現物分割の場合、相続財産価格にばらつきがある場合には、遺産分割によって大きく有利になる相続人、大きく不利になる相続人が発生します。十分に相続人間で協議できている場合は問題になりにくいですが、一部の相続人が十分に理解できていない状況で不利な現物分割で協議がまとまり、事後的に遺産分割協議が無効である等の争いに発生する可能性も否定できませんので、注意が必要です。
「甲はA土地を、乙はB土地を取得する」といった現物分割の場合には、特段の配慮は不要ですが、A土地を分筆して取得するような現物分割の場合には、地積測量図を添付する必要があります。調停におり解決するような場合、地積測量図を調停調書に添付して、調停条項においてその取得部分を特定する必要がありますので、注意が必要です。
遺産である借地権を一人の相続人が単独で取得する場合には、土地所有者の承諾は不要とされていますが、借地権を区分して複数の相続人に、それぞれ各別に借地権を取得させる分割をするには、地主の承諾が必要とされていますので、注意が必要です。
「甲は骨董品を、乙は自動車を取得する」といった現物分割ですが、自動車のように、法律により登録が義務付けられている動産に関しては、不動産の場合と同様、所有権の移転登録手続きに関しても明確に合意しておくべきです。また、動産の場合には、動産を取得する者と現実の占有者が異なることもあると思いますが、その引渡しをどのようにするかを併せて合意しておくことが必要です。
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