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判断能力が不十分になった人が利用する法定後見制度の概要

認知症その他の精神上の障害により反応力が衰えてしまった人の財産を管理し、契約など法的な面から日常生活を守る制度が成年後見制度です。そして成年後見制度は大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。
ここでは法定後見制度の概要について見ていきたいと思います。

判断能力が不十分になった人が利用する法定後見制度の概要

目次

1 法定後見制度とは?

法定後見制度とは、認知症や精神上の障害等により判断能力・意思能力が不十分な状態になってしまった人に対して適用される制度です。

2 法定後見制度の種類

法定後見制度では、支援を受ける人の判断能力の程度に応じで「後見」「保佐」「補助」の3つに分類されます。

※民法第13条第1項の行為とは次のような行為をいいます。
・貸した土地や建物、金銭を返してもらう、これらを他人に貸したり、預けたりする
・借金をしたり、保証人になったりする
・不動産や高価な財産(自動車、株式、貴金属、著作権等)を売買する、貸したり担保を付けたりする
・訴訟を起こしたり、訴訟を取り下げたりする
・贈与や和解をする、仲裁合意をする
・相続の承認や放棄、遺産分割協議をする
・遺贈を断る、負担付贈与(遺贈)を受ける
・新築、改築、増築、大修繕の契約をする等

3 後見人とは

法定後見が後見・保佐・補助に分類されることは前述のとおりですが、ここでは後見人について説明します。

(1)後見人の役割、権限

後見人の役割は、本人の利益のために財産を管理し、身上監護を行うことです。そのために一部の例外を除き、法的に広範な代理権が認められています。
また本人が行った日用品の購入等を除いて、本人が行った行為を取り消すことができます。

①財産管理の例
・預貯金の入金チェックと必要な費用の支払い
・不動産の管理
・株式、有価証券の管理
・税金の申告・納税
・居住用不動産の処分
 →居住用不動産を処分するには家庭裁判所の許可が必要になります

②身上監護の例
・治療、入院等に関して病院との間で必要な諸手続きを行う
・家を借りる場合に賃貸契約の締結、更新を行う
・介護施設に入る場合に施設を探し、入退所の手続きを行う
・要介護認定や更新の手続き、介護サービス業者とのサービス契約を行う

本人の介護、身の回りの世話(食事、洗濯、掃除など)は後見人の仕事ではありません。
また、入院や施設入所を強制したり、医療行為への同意、遺言、婚姻や養子縁組の届出など一身専属的な事項は後見人が行うことはできません。

(2)後見人になることが出来る人

後見人になるのに特別な資格は必要とされておらず、家庭裁判所により選任されれば、誰でもなることができます。ただし、必ずしも家族や親類が選任される訳ではなく、まったく関連のない弁護士や司法書士のような法律の専門家が選任されるケースが多くあります。

逆に、後見人になることが出来ない人については法律で規定があります。
・未成年者
・家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
・破産者
・被後見人(本人)に対し訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
・行方の知れない者

(3)後見人選任手続きの流れ

① 申立人を決め、必要書類をそろえる

申立人となることができるのは、本人または本人の四等親以内の親族など法律で定められています。

② 申立人が家庭裁判所へ手続きを行う

③ 改定裁判所の調査官が面談調査を行う

④ 家庭裁判所が本人の判断能力を確認する

⑤ 家庭裁判所が調査結果をふまえて後見人の選任などを行う

⑥ 選任された後見人が仕事を始める

4 法定後見制度のメリット・デメリット

メリット

・後見人が本人の預貯金や不動産を動かすことができる
・本人が行った不利益な契約などを取り消すことができる
・親族などが本人の資産を使い込んでしまうのを防ぐことができる

デメリット

・弁護士や司法書になどの専門家が後見人に選任されると費用がかかる
・相続対策や投資のために資産を動かすことができなくなる
・後見人の仕事は本人の死亡まで続く

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